不動産売買の前に知っておきたいこと~司法書士って何をしてくれるの?
司法書士とは
司法書士ってどんな資格?
不動産や会社法人の登記申請や裁判所に提出する書類の作成を職務としている資格です。
職務上、代理人として登記を申請することができる資格者は司法書士と弁護士です。
不動産売買になぜ司法書士が必要なの?
不動産売買代金の収受の時に、通常は司法書士が立ち会いをします。
売主は不動産を引き渡し代金を受け取れるのか、買主は代金を払い無事に引き渡してもらえるのだろうか、と双方が不安を抱きます。不動産の引き渡しと代金の支払はお互い同時に行う必要があります。「同時履行」と言いますが、お互いに安心できる状態でなければ引き渡しは進みません。
そこで、司法書士が公平な立場で代金収受の席に立ちあい、売主から移転登記に必要な書類を受け取り、買主にその旨を告げ、代金の支払をお願いすることになります。
司法書士は安全に取引するための専門家
所有権移転登記を無事に行うためには、登記記録に記載されている不動産の所有者と売主として立ち会っている人が同一人物か、登記記録と住所・氏名が同一か、売主の不動産には担保が設定されていないか等を確認する必要があります。これらを確認し、買主への所有権移転登記ができる書類を確実に間違いなく預かることが必要です。
買主は代金を手持ちの資金で準備することもありますし、住宅ローンを利用することもあります。住宅ローンを利用する場合には、所有権移転登記と同時に住宅ローンのために抵当権を設定する必要があるため、金融機関から必要な書類を預かります。
これらを行い、売主・買主双方が安心して不動産の引き渡し、代金の収受をできるようにするための専門家が司法書士です。
権利証が見当たらないときでも安心
「権利証がなくなった、見当たらない」、「決済の場に持ち込めない」。このような時に、登記申請を業務にすることができる資格者がいれば安心です。司法書士が「義務者が名義人本人に間違いないことを確認しました」という旨を記した書面を、本人確認資料とともに提出して登記申請をします。そうすれば、権利証がなくてもあるときと同じように登記手続きを進めることができます。
売買契約から引き渡しまでの注意点
契約と決済の流れ
売主と買主との間で、売買代金や引き渡しの日、その他の条件が整えば売買契約書(以下「契約」といいます)を作成し、売買代金の収受(以下「決済」といいます)を行います。契約から決済までおおよそ1か月の余裕をもたせることが多いです。この間に準備することがいろいろとあるためです。
売主が準備すること
1
まず、売主の名義にする必要があります。亡くなった方の名義のままでは売買による買主への所有権移転登記ができません。亡くなった方の名義のままで契約をしている場合には、決済日までに相続登記を済ませておく必要があります。契約には不動産会社を仲介者とすることが一般的です。会社によっては、契約に先立って相続登記を済ませないと契約できないというところもあります。
2
隣接地との境界確定のため、最近は土地の確定測量を行うことも多いです。確定測量では隣接地の所有者に立ち会ってもらい、境界の確認をする必要があります。所有者が遠隔地にいる場合はなかなか立ち会いの日程が定まらず、所有者の行方がわからないこともあります。
不動産会社とよく相談し、なるべく早く、できれば契約に先立って準備をしておいた方がよいでしょう。市区町村役場との境界確認(公の道路と敷地との境界を確定する)のための測量にも日数がかかる場合があるので、注意が必要です。
3
登記記録に記載されている住所・氏名と現在の住所・氏名が異なる場合には、証明書が必要です。氏名に変更があった場合には戸籍謄抄本を取り寄せなければなりませんが、本籍地が遠い場合は日数がかかります。住所を転々としている場合も、複数の住民票(現在地の住民票に加え、前住所の除票等)や戸籍の附票といったものが必要です。住民票の保管期間は、転出等で廃棄された後5年間とする市区町村役場が多いため、それ以前のものは取得できない場合があります。早めに不動産会社や司法書士に相談をしてください。
4
住宅ローン等の残債があり抵当権が設定されている場合には、遅くとも決済時までには抹消登記ができるようにする必要があります。あらかじめ、不動産売買を行うので中途返済を行うこと、抵当権の抹消が必要であることを伝え、担当の金融機関に準備をしてもらいましょう。これも、金融機関の準備期間が必要なので余裕をもって伝えることが重要です。
5
所有権移転登記には売主の権利書が必要です。どこに保管しているのかわからないケースがよくあります。早めに確認しておきましょう。
6
決済時には司法書士が立ち会うことが多いですが、このとき本人確用の資料の提示を求められます。運転免許証などの顔写真があるものか、健康保険証など顔写真のないものについては2種類の公的な証明書を準備する必要があります。
7
決済が終われば不動産を明け渡す必要があるので、明け渡しのための引っ越しの準備を行いましょう。また、鍵は決済時に買主に渡すのが一般的です。子どもに合鍵を持たせている時でも、合鍵も含めて全て渡すように心掛けてください。買主が安心して引き渡しを受けられることが大切です。
これらの準備の状況を仲介している不動産会社と共有し、司法書士にも伝えておけば、決済当日に慌てることがないでしょう。
買主が準備すること
1
売買代金の支払いを手持ちの資金で行うのか、金融機関からの借入を利用するのかを決めます。
2
借入を利用するためには、金融機関の承認や準備期間が必要です。余裕をもって契約前にあらかじめ金融機関と相談しましょう。
3
決済の場所を決めます。仲介をしている不動産会社や銀行等の金融機関から場所を借りて行うことが一般的です。
4
大きな金額を持ち運ぶのは危険で不安なため、金融機関を利用するのが安心です。金融機関に場所を借りるときには、おおよその出席人数を伝えましょう。仲介している不動産会社の担当者と相談しながら進めてください。
自己資金で支払う場合には住民票、金融機関からの借入のために抵当権を設定する場合には登記用に印鑑証明書が必要です。金融機関の保管用も含め、何通用意すればよいのか確認しておきましょう。
5
買主も司法書士から本人確認用資料の提示を求められます。運転免許証などの顔写真があるものか、健康保険証など顔写真のないものについては2種類の公的な証明書を準備する必要があります。
決済当日の流れ
- 決済の場所に、売主、買主、仲介業者、司法書士が立ち会います。場合によっては売主の抵当権者や買主の金融機関担当者が立ち会うこともあります。
- 司法書士が所有権移転登記等に必要な書類の確認を行います。
- 売買代金等の収受を行います。売主に借入がある場合には、買主からの売買代金をあてて同時に返済し、抵当権の抹消書類を司法書士が預かります。
- 不動産の鍵や、確定測量をした場合にはその報告書を引き渡します。設計図書等も、売主が保管していれば引き渡しされることが多いです。
売主・買主双方が万全の準備をすることが重要です。不動産会社や司法書士と何度も確認し、準備忘れのないようにしておきましょう。
監修:齋藤祥文
資格:不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士