住み替えを検討する上で知っておきたいあれこれ(流れやタイミング・住み替えローン)
はじめに
家族が増えて現在のマンションでは手狭になった・転勤が決まり引っ越しが必要になったなど、住み替えが必要になる理由はさまざまです。住み替えを検討していると、「住まいの売却と購入は、どちらが先か」「住宅ローンを完済できるか」などさまざまな疑問や不安が出てきますよね。
この記事では、住み替えの流れや新しい住まいの購入に利用できる住宅ローンなど、住み替えする上で必要な基礎知識を紹介しています。住み替えに失敗しないように、ぜひ参考にしてください。
住み替えの流れを解説。「買い先行」「売り先行」どっちが良い?
住み替えとは、現在居住している一軒家やマンションを売却し、新しい住まいに引っ越すことです。住み替えにおける不動産の売却は、次のような流れで進めます。
- 不動産会社選び・査定依頼
- 不動産の査定
- 媒介契約
- 販売活動
- 売買契約
- 引き渡し
新しい住まいの購入を進める際の流れは、次のように進めます。
- 物件探し
- 物件見学
- 売買契約・手付金の支払い
- 住宅ローン手続き
- 残金支払い
- 受け渡し
では、住まいの売却と購入は、どちらを先に進めるのが適切でしょうか。購入を先に進める「買い先行」・売却を先に進める「売り先行」のいずれにも、メリット・デメリットはあります。
買い先行 | 売り先行 | |
---|---|---|
メリット | ・仮住まいが不要である ・納得のいく物件が見つかるまで、住まいの購入を先延ばしにできる | ・新しい住まいを購入する際、資金計画を立てやすい・現在の住まいの売却を急ぐ必要がない |
デメリット | ・現在の住まいの売却金額を、購入資金に回すことができない ・二重の住宅ローンを抱えるリスクがある | ・仮住まいの準備が必要である ・新しい住まい探しがスムーズに進まないと、仮住まいの家賃の負担が重くなる ・2度の引っ越しで負担(費用や手間)がかかる |
どちらがいいかで迷う場合は、次の目安を参考にしてください。
買い先行:資金にゆとりがある人におすすめ
売り先行:無理のない資金計画で、住み替えを進めたい人におすすめ
「買い先行」で進めると、家計に負担がかかります。金銭的な負担を極力軽減しつつ住み替えを進めたい人は、「売り先行」を選択しましょう。
住み替えを行うタイミングとは?
国土交通省の調査によると、直近の5年で住み替えを行った人の主要な目的は、次のような内容です。
- 通勤通学の利便
- 広さや部屋数
- 世帯からの独立(単身赴任、離婚などを含む)
- 新しさやきれいさ
- 結婚による独立
- 住居費負担の軽減
- 家族等との同居・隣居・近居
- 日常の買い物、医療などの利便
(参照:国土交通省住宅局「平成 30 年住生活総合調査(速報集計)結果」/ https://www.mlit.go.jp/common/001329355.pdf)
上記のデータから判断すると、家族構成の変化によって「部屋が狭い」「部屋数が足りない」と感じたときが住み替えのタイミングです。また、結婚や離婚などライフイベントが発生したときや、転勤も、住み替えが必要となるタイミングです。
中には、定年退職後や老後資金を蓄えるために、住み替えを選択する人もいます。現在の住宅ローン残高と比較して大幅に安い住まいに住み替えた場合、住居費の負担を軽減できることが理由です。
住み替えにかかる費用
一軒家やマンションの売却・新しい住まいの購入には、さまざまな費用が発生します。住み替えにかかる費用の項目を紹介します。
<売却時>
- 仲介手数料
- 印紙税
- (売却時に住宅ローン残高がある場合)抵当権抹消の登記費用、ローン完済手数料
- 所得税、住民税
- 引っ越し費用
ほか
<購入時>
- 住宅購入費
- 仲介手数料
- 印紙税
- 登記費用
- 不動産取得税
ほか
住み替えにかかる費用を軽減できる、特例があります。
3,000万円の特別控除 | 一軒家やマンションの売却益から最大3,000万円を差し引きできる特例 |
買い替え特例 | 一軒家やマンションの売却益に対する税金を次回の売却時まで先送りできる特例 |
譲渡損失の損益通算 | 一軒家やマンションの売却損が出た場合、一定期間、他の所得との損益通算を認める特例 |
譲渡損失の損益通算は、住み替え時の住宅ローン控除と併用できます。その他の特例は、住宅ローン控除との併用ができません。
住み替えローンの利用法と注意点
住宅ローンを残したまま住み替えを希望する場合、住み替えローン(住宅ローンの住み替えコース)を利用できます。住み替えローンとは、現在居住している一軒家やマンションの売却代金で住宅ローンを完済できない場合に残債務分を借入できる商品です。住み替えローンでは、住宅ローンの残債務分に加え、新しい住まいの購入資金も借入できます。
住み替えローンを利用する際の流れは、次の通りです。
- 住み替えローンを取り扱う銀行に相談する
- 住み替えローンの返済シミュレーションを受ける
- 住み替えローンの審査を受ける
- 審査結果の通知を受ける
- 住み替えローン契約を結ぶ
住み替えローンは非常に便利な商品である反面、リスクも伴います。住み替えローンを検討する際には、次の3点に注意しましょう。
(1)通常の住宅ローンと比較し、審査が厳しい
住み替えローンは、新しい住まいの資産価値を上回る金額を借入れる商品です。そのため、審査が比較的厳しく、信用状態によっては、借入できないケースがあります。
(2)通常の住宅ローンと比較し、金利が高い
住み替えローンの金利は一般的に、通常の住宅ローンを上回る水準です。金利が高い分だけ総返済額もかさむので、よく考えて利用しましょう。
(3)売却と購入を同時に行う必要がある
住み替えローンを利用するには、一軒家やマンションの売却日・新しい住まいの購入代金の決済日と引き渡し日をそろえることが条件です。住み替えにあたって、「住宅ローンの残った家を売却して賃貸物件に入居し、新しい住まいを探す」という売り先行型の取引はできません。
住み替えの媒介契約時は買取保証をつけるべき?
売却期限がある程度定まっている住み替えでは、物件の媒介契約時に買取保証をつけることをおすすめします。買取保証とは、一定期間広告活動を継続しても買い手が見つからない場合に不動産会社が買取を行ってくれるサービスです。買取保証をつけることで期限内に売却ができるため、スケジュールに沿って住み替えを進めることができます。
住み替えで買取保証をつけることのメリット・デメリットです。
メリット | デメリット |
---|---|
・買い手の見つかりにくい物件でも、確実に現金化できる ・あらかじめ売却価格の最低ラインが分かるので新しい住まいの資金計画を立てやすい ・不動産会社に買い取ってもらうことになった場合、仲介手数料がかからない | ・不動産会社の買取の場合、市場価格で売却した場合の6割〜8割程度の金額となる・買取保証を行っていない不動産会社もあるので、相談先が限定される ・買取保証をつける場合は、一般媒介契約を選択できないケースが多い |
買取保証は、高値で売却することよりも、取引の確実性・計画性・安心感などを重視する人におすすめの選択肢です。ご自身の希望条件と照らし合わせて、買取保証をつけるべきかを検討してみてください。
まとめ
居住中の一軒家やマンションを売却し、新しい住まいへの引っ越しを検討中の方に、住み替えの基礎知識を紹介しました。このように、住み替えにはさまざまな手段があります。制度や注意点などを理解した上で、ご自身に適した方法で住み替えを進めてください。
監修:齋藤祥文
資格:不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士