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住まいの悩み

専業主婦が相続した不動産を売却。夫の扶養から外れてでも売るべき?

「親からの相続で専業主婦の妻が不動産を相続したけど利用予定がなくて」と売却を検討しているなら、固定資産税や建物の維持管理が大変なので売却したほうが得なケースが多いです。
専業主婦の場合、不動産を売却して利益が出たことで夫の扶養控除を受けられなくなるのではと考えるかもしれません。

不動産を売却して利益が出ると、専業主婦は社会保険の扶養からは外れませんが、税法上の扶養からは外れる可能性があります。専業主婦であれば、不動産を売却した年だけ外れることになるので、気にせず早めに売却したほうが経済的メリットがあります。ただし、夫の扶養控除から外れたくない事情があるなら、扶養から外れずに売却することができるか確認しましょう。
今回は、専業主婦である妻名義の不動産を売却で注意するポイントについて解説します。

社会保険は不動産売却で収入を得ても扶養から外れない

扶養控除を受けている専業主婦の妻が不動産を売却して利益が出た場合、扶養を外れてしまう可能性があります。しかし、扶養には税法上の扶養と社会保険上の扶養があり、すべての扶養控除が外れるわけではありません。社会保険上の扶養は、不動産売却で利益が出ても基本的には扶養控除から外れません。

一時的な収入は対象外

社会保険には、健康保険と厚生年金があり、健康保険については、加入している保険組合によって取り扱いが違います。たくさんの企業が採用している協会けんぽでは、扶養の対象者は「年間収入が130万円未満」で、さらに「被保険者の年間収入の2分の1未満」の人です。

専業主婦が不動産を売却して130万円以上の利益が出ると対象からはずれてしまいそうですが、協会けんぼの場合は継続的な収入のみを対象とし、一時的な収入は対象外となるので扶養から外れることはありません。

一般的な健康保険組合は、協会けんぽと同じですが、一時的な収入を継続的な所得に含める健康保険組合もあるかもしれませんので、あらかじめ、在籍する会社にに確認しましょう。
また、厚生年金についても同様の考え方のため、一時的な収入があっても扶養は外れません。

住民税、所得税などに影響が出る可能性がある

税法上の扶養では条件によっては扶養から外れてしまいます。税法上の扶養では配偶者控除が設定されていて、配偶者の年間合計所得が38万円以下の場合は非課税です。そのため、不動産を売却して38万円以上の譲渡所得(利益)が出ると扶養から外れます。

扶養から外れると夫は配偶者控除が受けられなくなって税金の負担が増え、妻には住民税と所得税が発生します。また、配偶者手当がある会社の場合、妻に利益が出ることで支給対象から外れ、収入が減る可能性もあります。ただし、譲渡所得は一時的な所得なので翌年の年間合計収入が38万円以下になれば扶養に戻ることができます。

譲渡所得の計算と譲渡所得税率譲渡所得の計算と譲渡所得税率

38万円以上の譲渡所得を得ると妻には税金がかかりますが、譲渡所得の計算とかかる税率は次の通りです。

譲渡所得=譲渡価格(不動産の売却額)-(取得費+譲渡に掛かった費用)

不動産の所有年数 税率
5年以下 20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
5年以上 39.63%(所得税30.63%、住民税 9%)

扶養から外れずに売却する方法


1年だけとはいえ扶養から外れることを避けたい場合は、扶養から外れずに売却することをご検討ください。譲渡所得の特別控除を利用できれば、利益を38万円以下にできる可能性があり、また、夫へ贈与してから売却するといった方法もあります。

譲渡所得の特別控除を利用する

妻の不動産を扶養から外れずに売却するには、基本的には所得制限の範囲内、年間合計収入が38万円以下に抑える必要があります。「利益が38万円以下の不動産なんてないのでは?」と思うかもしれません。
たしかに、売却価格が38万円以下の不動産はほとんどありませんが、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」が利用できるケースでは、利益が38万円以下になる可能性があります。

この特例は、定められた要件に当てはまれば、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除されるというもので、利用できるケースは限られますが、利用することができれば、夫の扶養から外れることなく不動産を売却できる可能性がありますので、確認する価値はあります。控除を受けるには以下の要件を満たす必要があります。

まず、相続が開始された日から3年後の12月31日までに売却をする必要があります。

離れて暮らしていた親が亡くなり、空き家を相続することになった場合、次の要件全てを満たせば特例が適用されます。

  • 相続開始の直前まで被相続人の住居として使われていた
  • 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋
  • 区分所有建築物(マンション等)以外の家屋
  • 相続の開始直前まで、被相続人以外に住んでいた人がいない
  • 相続から譲渡の時までの間に事業や住居で使用していない

また、親と同居をしていて、親の死去きっかけに相続した住宅を売却するケースもあるかもしれません。その際は、以下のいずれかの要件を満たせば、特例が適用されます。

  • ・現在住んでいる
  • ・転居済だが、転居から3年後の12月31日が過ぎていない
  • ・災害などで住居が滅失したが、滅失から3年後の12月31日が過ぎていない
  • ・転居後に家屋を取り壊して1年以内でその間に事業等で使用していない

この他にも親が老人ホームに入居していた場合や耐震基準に関連した条件もありますので、当てはまる可能性がある方は、一度不動産会社や税理士に相談をしてみましょう。
なお、この制度には期限があり、令和5年(2023年)12月31日までとなっています。
それ以降は控除が適用されない可能性がありますのでお気をつけください。

夫に贈与してから売却する

妻の不動産を売却して利益を38万円以内に抑えることが難しいケースが多いです。その場合は、夫に贈与してから売却したほうが良いかもしれません。夫に贈与すれば、売却して得た譲渡所得は夫の所得になるので妻の所得が控除の範囲を越えることはありません。

ただし、夫の年間合計所得が1,000万円を越えると扶養控除の対象外となります。夫の所得と不動産の売却益がどのくらいになるかをきちんと確認しておきましょう。
また、夫へ妻の不動産を贈与する際には贈与税と登録免許税がかかりますので、贈与せずに売却して所得税や住民税を支払う場合とどちらが良いか比較することも重要です。不動産を贈与すると、夫は妻から不動産を贈与されると税務署に申告して贈与税を納付する必要があります。贈与税は、以下のとおりです。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 25万円
800万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

例えば、300万円の不動産を贈与する場合、300万円から基礎控除額の110万円を差し引いた190万円が「基礎控除後の課税価格」です。税額は15%になるので190万×15%=28万5000円が贈与税となります。

また、婚姻関係が20年以上経過している夫婦間で居住用の不動産を贈与する場合、基礎控除額110万円以外に2,000万円の控除を受けられますが、これは居住用が対象なので相続した不動産に住んでいる必要があります。

贈与の際に不動産の所有権を妻から夫へ移すことになりますが、所有権移転の申請を行う際には登録免許税(不動産価格×2%)が発生しますので、300万円の不動産であれば6万円が登録免許税となります。この他に夫の収入が増えたことによって課税される金額も変わります。それらの点を踏まえ、所有者が妻のままで売却するのと夫に贈与してから売却するのでどちらが良いか判断しましょう。

まとめ

専業主婦が相続で不動産を所有した際の売却についてご説明しました。
扶養には、税法上の扶養と社会保険上の扶養があり、相続した妻名義の不動産売却については、社会保険上の扶養には影響がありませんが、税法上の扶養については譲渡所得次第では配偶者控除が外れます。ただし、控除から外れるのは1年間だけでなので、不動産を売却することで得られる利益を考えれば、さほど気にしなくて良いケースは多いです。

もし、1年間でも配偶者控除から外れることを避けたいのであれば、妻の年間合計所得を38万円以下にすることができないか、夫に贈与してから売却したほうが得になるかを確認してみてください。なお、なかなか売る決断ができず、所有し続ける方も時折いらっしゃいますが、所有していれば固定資産税がかかりますので、相続した不動産を利用しないなら、早めの売却がおすすめです。経済面だけでなく手続きをする手間など踏まえ、ご自身やご家族にとって一番良い方法で売却を進めましょう。

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