住宅ローンがオーバーローン状態でも売れる。売却の方法と押さえておきたい注意点
不動産の売却や住宅ローンについてインターネットで調べているとオーバーローンという言葉を目にしたことがあるのではないでしょうか。
不動産の価格に対して住宅ローンの残債が多い状態がオーバーローンです。
不動産価格に対して借り入れが多い状態なのでリスクはありますが、実は不動産の購入時に頭金がいらないなどのメリットもあります。
ただ、オーバーローンの不動産は売却しても住宅ローンの支払いが残ってしまうので、そもそも売却することができるのかも気になるところですよね。
今回は、オーバーローンとはどういったものか、注意点と不動産の売却方法についてご紹介します。
オーバーローンとは?
オーバーローンとは、いわゆる債務超過の状態にあることを言い、もともとは、購入した不動産よりも住宅ローンの残高が多くなってしまうことを指します。これが派生して、住宅ローンを組む際に、これから購入する不動産の価格よりも最初から多く融資を受けることもオーバーローンと呼ばれるようになりました。
購入後に物件価格が下がったことでオーバーローンの状態になるケースが前者で、購入時に不動産価格に諸経費などを加えて最初からオーバーローンで住宅ローンを借りるケースが後者にあたります。
ローンを組む際に組み込むことができる諸経費には、印紙税や登録免許税、不動産取得税、司法書士に支払う登記手数料や金融機関に支払う融資手数料、火災保険料などがありますが、金融機関によって異なるケースがあるので、何を諸経費にできるかは申し込む前に確認しておきましょう。
住宅ローンの借り入れ方法には、他にも頭金を入れるケースや不動産価格と同額借りるフルローンなどがあります。
以前は、頭金を2割~3割いれるのが当たり前でしたが、最近ではフルローン、オーバーローンに積極的な金融機関も増えてきています。
オーバーローンにはどんなリスクがある?
オーバーローンは、不動産の価格よりも高い金額のローンを組むことになるのでやはりリスクがあります。
オーバーローンを活用するにあたってはリスクを理解しておくことが重要です。
ここではオーバーローンのリスクについて紹介します。
売却をできない可能性がある
不動産を売却する際には、住宅ローンを完済する必要があります。
一般的には、売却で得た資金を利用して住宅ローンを完済するのですが、オーバーローン状態の場合、不動産価値より住宅ローンの残高のほうが大きいため、売却で得た資金だけでは住宅ローンを完済することができません。したがって、売却するには住宅ローンの不足分の資金を自分で用意する必要があります。
不足の資金が用意できない場合は住宅ローンが完済できないので売却ができないことになります。
毎月の返済が増える
オーバーローンを組むということは、借入金額が増えるということです。
そのため、30年や35年に期間を延ばしても他のローンより毎月の返済金額が高くなります。
収入に余裕がある場合は良いですが、毎月ギリギリで返済を組むと、仕事の減少や転職など、突然の収入減となった場合に払いきれないというリスクを負うことになります。
金利が高くなる可能性がある
オーバーローンを組む場合、諸経費分については住宅ローンとは別枠での借り入れとなることもあります。
住宅ローン自体は金利が安くても、別枠のローンは同じ金利ではなく高い金利が適用されることが多いため、返済額が多くなる傾向にあります。
オーバーローンがメリットになるケースって?
オーバーローンにはデメリットもありますが、頭金を準備しなくてよいなどメリットも多いです。
具体的に見ていきましょう。
頭金が無くても不動産が買える
不動産の購入時には、金融機関によっては物件価格の2割~3割の頭金が必要となる場合があります。
しかし、物件価格の2割~3割というと、百万円単位の金額であることが一般的ですので、そのようなまとまったお金を用意するのは難しいという人も多くいます。
これに対して、オーバーローンが利用できる金融機関であれば、頭金も含めてローンを組むことができますので、頭金の準備は必要ありません。
現金の手持ちが少ない、他の用途に利用したいので現金を温存したいという場合に有効です。
また、良い物件が見つかっても頭金や諸経費用の資金の準備に時間がかかってしまい他の人に決まってしまったということも、オーバーローンを使えば防ぐことが可能です。
住宅ローン控除額が増える
オーバーローンでも諸経費を住宅ローンと同じ枠にしてくれる金融機関もあります。
その場合は諸経費も住宅ローンと同じ金利で借り入れができるほか、住宅ローン控除額の対象となり、頭金を入れる場合やフルローンの場合と比べると住宅ローンの控除額が増えます。
オーバーローンの場合の住まいの売却方法
普通に考えるとオーバーローンの不動産は、売却しても住宅ローンが完済できないので売却することができません。
しかし、オーバーローンの不動産でも売却をする方法があります。
不足金額を用意する
一番シンプルなのが住宅ローンと不動産の売却価格の差額の資金を準備して住宅ローンを完済する方法です。
例えば、不動産価格が2,000万円、売却価格が1,800万円の場合、200万円を準備すれば不動産を売却することができます。
住み替えローンを利用する
住み替えローンは、現在のローンと新しく購入する不動産のローンをまとめて借り入れする方法です。
住み替えローンを活用すればオーバーローンでも不動産の売却が可能です。
ただ、借り入れ金額がかなり増えるため金融機関の審査のハードルも高くなりますので、収入に余裕がある場合や、売却する物件が高く売れる見込みがある場合などに適している方法です。
住宅ローン支払いがどうしても苦しい場合
現在すでに住宅ローンの支払いが苦しい場合は、手持ち資金も少なく、与信的にも厳しいので不足金額を用意する、住み替えローンを利用するということは難しいことが多いでしょう。
ですが、住宅ローンを支払わないままだと金融機関に競売開始の申し立てをされてしまい、最悪の場合は不動産を失うことになります。
そういった場合には、任意売却やリースバックなどを検討しましょう。
住宅ローンを滞納すると危険
まず、住宅ローンを滞納した場合、どうなってしまうのでしょうか。
住宅ローンを滞納してもすぐに不動産を失う訳ではなく、まず金融機関から督促状が送られてきます。
1度の滞納では大きな問題になりませんが、滞納が3か月を超えると金融機関は不動産差押えの手続きに移行します。
差し押さえられた物件は競売に掛けられて強制的に売却されてしまうため、通常の売却のように高い価格で物件を売却することができないうえ、引っ越し時期なども自由に決めることはできなくなってしまいます。
競売で売却された場合でも、残った住宅ローンの支払いは続きます。
競売は、所有者にとって非常にデメリットが多いのです。
任意売却
不足金額を準備できない場合は、任意売却を活用する方法があります。
任意売却は金融機関の合意のうえ売却する方法で、不足分については分割払いで支払うといった対応を取ってくれます。
通常の不動産売却手続きで進められるので競売よりも高く売却出来るのがメリットです。
競売だと官報などインターネットに掲載されるので近所の人や知り合いに知られてしまう可能性がありますが、任意売却であれば売却した事実を周囲に知られる心配はありません。
リースバック
リースバックは、不動産会社に自宅を購入してもらい、その不動産会社と賃貸借契約を結ぶ方法で、売却後もそのまま自宅に住むことができます。
住宅ローンの支払いに困っていることを周囲に知られることなく売却することができ、学校区や友人関係などこれまでと生活を変えることなくそのまま住み続けることができるメリットがあります。
売却後に残債が残ってしまう場合は、住宅ローンと家賃の2重払いになってしまい、大きな負担になってしまう可能性があるので注意しましょう。
リースバックの詳しい仕組み等については以下の記事もご覧ください。
住宅ローンを借りる前に、返済の設計をしっかり立てましょう
オーバーローンを利用すれば、手元に資金が無くても不動産を購入することができます。
しかし、不動産価格よりも住宅ローンの残債の方が多いので売却が難しくなることや、月々の返済額が増えるというデメリットもあります。
どうしても住宅ローンが払いきれない場合は、任意売却やリースバックを活用するのもひとつの方法です。
競売に掛けられてしまうとすべて失ってしまいますが、任意売却やリースバックであればまとまった資金を得られることや、そのまま住み続けられるメリットもあります。
住宅ローンを借りる際には、返済計画について金融機関や不動産会社ともよく相談し、無理のないように借り入れをするようにしましょう。