転勤になったら持ち家はどうすべき?5つの対策方法
ビジネスパーソンの場合、持ち家を購入後に転勤の辞令があると正直どうすればいいかわからないという人も多いと思います。持ち家を売却する、貸し出して家族で移住する、単身赴任で一人頑張る、帰ることを見越して管理委託する、空き家にして維持しておくなど、家族や環境などによって選択肢は違うはず。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で選択しないと、後で後悔することになります。この記事では、転勤になった際の対処法について詳しく解説します。
転勤が決まったら、まずチェックすべきこと
突然転勤を言い渡されても慌ててはいけません。転勤が決まった際には、単身赴任手当や住宅補助といった資金面、幼稚園や小学校など子供のライフイベントなど家族の意向、その他、転勤の期間や住宅ローンの状況など、リスクを避ける上でチェックしておくべきポイントがあります。
家族の意向
転勤が決まった際に最も注意しなければならないのが家族の意向です。家族が離れて暮らすとなる資金面だけでなく、生活や精神面でもさまざまな支障が出ます。出産が近い、子供が幼稚園や小学校など進学するタイミングだと引っ越しが難しいケースも。単身赴任した方がいいのか、家族で移住した方がいいのかについてなど、じっくりと話し合う必要があります。
資金面
単身赴任をする場合は、二重生活になるので食費、光熱費、住居費などは通常よりも負担が大きくなります。一般的には、単身赴任手当や住宅補助といった支援があります。厚生労働省が実施した「就労条件総合調査」では、2014年11月の時点で民間企業の単身赴任手当の相場は46,065円です。住宅補助の条件は会社によって異なり、家賃の全額負担、3〜7割負担などさまざまです。条件次第では家計に大きな負担になることもあるのできちんと確認しておきましょう。
転勤の期間
転勤の期間が短ければ、単身赴任や空き家にしておく、3〜5年など期間が長ければ売却する、貸し出すといった選択ができます。短期間でも賃貸物件として家を貸し出したい場合は、期限付きの定期借家契約にするなど工夫が必要です。
住宅ローンの状況
転勤先で新たにマイホームを買う場合は、売却しながら購入することになるので、一時的にダブルローンとなり、ある程度高収入でないと審査が通りません。まずは、事前にダブルローンが可能かについて金融機関に相談しましょう。また、住宅ローンの残高が多いと残高以上で売れなければ自分のお金でまかなう必要があります。まかなえない場合、売却は難しくなるので取れる選択肢が少なくなってしまいます。
転勤にあたって、持ち家に対してできる5つの処分方法
転勤が決まって、持ち家をどのようにするかには次の5つの方法が考えられます。
- 単身赴任する
- 賃貸物件として貸し出す
- 売却する
- 管理を委託する
- そのまま空き家にしておく
それぞれのメリット・デメリットについて確認しておきましょう。
持ち家を残し、単身赴任する場合
持ち家には家族が住み、夫(または妻)だけが単身赴任することを選択した場合のメリット、デメリットについては次の通りです。
メリット
家族の生活環境を維持できる
単身赴任する以外の家族は、会社を辞めたり、学校を転校したりする必要はないので、これまでと変わらない生活が可能です。
管理を気にする必要がない
賃貸や空き家にしている場合は、不動産会社や親族、知人等に家の管理を任せる必要がありますが、単身赴任の場合は家族が住んでいるため管理を気にする必要がありません。
デメリット
家族が離れる
単身赴任の場合に最も問題になるのが、家族が離ればなれになってしまうことです。小さな子供がいる場合やパートナーが働きに出ている場合には、パートナーも大きな負担を背負うことになります。またトラブルが発生した場合にもすぐに戻れないので、残った家族は不安を抱えたまま生活をしなければならないこともあります。
引っ越し費用、生活必需品の購入、家賃負担など経済的負担の増加
単身赴任すると、引っ越し費用や家具などの生活必需品の購入だけでなく、二重生活になるので食費や光熱費も増えます。経済的な負担がかかるので、子供の教育費や貯蓄へ回す資金が不足することも考えられます。
持ち家を賃貸物件として貸し出す場合
持ち家を貸し出すことを選択した場合にもメリット・デメリットがあります。
メリット
賃料収入が見込める
入居者が決まれば、毎月決まった賃料収入が見込めます。家賃の設定としては、負担を減らすためにも住宅ローン+維持費(マンションの場合は管理費、修繕積立金など含む)以上で設定するのが理想です。
コストを抑えることができる
空き家にした場合、空気の入れ替えや手入れを行わないので建物の劣化が進みやすくなります。賃貸物件にすれば、入居者が利用してくれるので建物の劣化を防げます。
デメリット
他人に家を利用される
賃貸だからと雑に扱う入居者がいないとも限りません。室内がボロボロにされてしまうリスクもあります。せっかく気に入って購入した持ち家なのに、他人に利用されるのは嫌だという人は避けたほうがいいでしょう。
一度貸し出すと評価が下がる
賃貸物件にすると収益物件として扱われるため、住宅ローンが使えません。そのため居住用として売却するよりも価格が低くなるケースが多く、売却価格が残債以下となり売却が難しくなります。
持ち家を売却する場合
持ち家を売却するのも一つの方法です。やはり良い点と悪い点があります。
メリット
売却益が得られる
現在は不動産価格が上昇傾向にあり、都心部や人気エリアの物件は購入時よりも高く売れるため、売却益を得られる可能性が高いです。
維持管理の心配がなくなる
持ち家は定期的に掃除や通風、庭の草木の管理などが必要になりますが、売却してしまえば維持管理をする必要がなくなります。
デメリット
住宅ローンの残債が多いと売却できない
購入時より物件価格が下がってしまった場合やオーバーローンで購入した場合、売却価格が住宅ローンの残債以下となってしまうので差額を用意できないと売却できません。また、立地や建物の問題などで売却が難しい場合も、同様に売却は難しいでしょう。その場合でも、住宅ローンの返済が進んでいるのであれば買取という選択肢もあります。
生活環境が変わった際に、再度家探しが必要になる可能性がある
売却してしまうと、転勤生活が予想以上に早く終わり戻ってこれる場合に、また新たに家探しをしなければなりません。どれくらいの期間で帰ってこれるかについて確認しておくことは非常に重要です。
持ち家の管理を委託する場合
親族または空き家管理会社などに、管理を委託するという方法もあります。
メリット
他人が使うことなく状態を維持できる
持ち家は放置していると建物劣化が進みますが、管理を任せることで通風や掃除をしてもらえるため、建物の劣化を抑えられます。
転勤の期間に応じて柔軟に対応できる
売却してしまうと急に転勤から戻れることになった際に新たに住居を探す必要がありますが、管理を委託しておけば、転勤の期間に応じて柔軟に対応することができます。
デメリット
管理会社に支払うコストがかかる
管理会社に委託すると、当然ながら委託料がかかります。住宅ローンの支払いに加えてさらに金銭的コストがかかることになり、総負担が大きくなります。
収益を生まない
貸し出しをすれば賃料収入が入りますが、管理を委託するだけでは収益を生まず、コストがかかるだけです。
そのまま空き家にする場合
持ち家を空き家にする場合のメリット・デメリットは次の通りです。
メリット
貸し出し、管理委託などと違いトラブルの心配がない
貸し出しや管理を委託すると人に任せることになるので、入居者からのクレームや鍵の締め忘れなど何かとトラブルが発生します。その点、空き家の場合は誰も使っていないのでトラブルの心配もありません。
転勤が短い期間で終わってもすぐに使える
管理委託のケースと同様、誰も住んでいないので状況に応じて持ち家を利用することができます。
デメリット
建物の経年劣化が早まる可能性がある
人が住んでいないと通風や掃除などの手入れを行われないため、建物の経年劣化が早まる可能性があります。
転勤先で賃貸物件を借りる場合はその分費用がかかる
空き家の場合は、住宅ローンの支払いや固定資産税などの維持費は変わりません。転勤先で賃貸物件を借りると持ち家のローンに賃料が加わり、毎月の費用が大幅に増加します。
住宅ローン控除の対象から外れる可能性がある
住宅ローン控除の適用は、毎年12月31日の時点でローンを借りている本人がその家に居住していることが条件です。貸し出したり空き家にして住民票を移してしまうと住宅ローン控除を受けられなくなる可能性があります。
まとめ
転勤になったら持ち家はどうすべきかについて、5つの対策方法についてご紹介しました。それぞれメリット、デメリットがあり、手当などの条件面や家族の意向、住宅ローンの状況などに応じて、取りうる選択肢は変わってきます。貸し出す場合の退去リスクや、管理委託または空き家にすることによるコスト負担を考えると、売却して新たな生活を送るのも一つの方法です。まずは、売却できるのか、難しい場合は買取できるのかを検討し、その上で単身赴任するか、貸し出すまたは管理委託にする、そのまま空き家にしておくのかを決めるといいでしょう。