仲介と買取の違いとは?
不動産の売却にはさまざまな方法がありますが、大きくは「仲介」と「買取」の二つに分けることができます。
一般的な不動産売却方法として知られているのは仲介ですが、この記事では仲介と買取を比較し、それぞれの特徴を解説します。
仲介と買取の違い
不動産売却方法として一般的なのが、仲介による売却です。仲介では、まず一括査定サイトなどで不動産会社に価格査定をしてもらい、競合物件や成約事例を元に売出価格を設定します。次に、不動産会社と媒介契約を結び、ポータルサイトなどに広告を掲載して買主を探すという流れになります。この場合、買主の対象は不動産会社ではなく主に個人です。
一方、買取は不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。不動産会社が提示する買取価格に納得できれば、最短3日程度で売却し、現金化することも可能です。
たくさんある買取のメリット
最短3日ほどで不動産を売却・現金化できることもある買取ですが、メリットはスピードだけではありません。買取のメリットには、他に次のようなものがあります。
日程調整がラク
仲介による売却では、購入検討者から突然内覧希望が入ることがよくあります。個人の購入希望者は、仕事が休みの週末や祝祭日に内覧を希望されることが多いため、自宅に住みながら売却をする場合、家族でのお出かけなどの調整が難しくなる場合があります。
一方、買取では不動産会社が売主の都合に合わせて内覧をするので、自分の予定を優先しながら売却活動を進めることができます。
交渉がラク
仲介とは異なり、買取の場合は不動産のプロフェッショナルである不動産会社が買主です。細かいやりとりや交渉はほとんどなく、スムーズに取引を進めることができます。交渉によっては、使っていた家具・家電の片付けや掃除をしなくてよく、そのままの状態で売却することも可能です。
確実に売却できる
仲介では、気に入ってもらえたとしても買主の心変わりがあり、契約が急きょキャンセルになることがあります。交渉が成立したとしても、住宅ローンの審査が通らずに契約が結べないケースもあります。
一方、買取の場合は不動産会社が事業として購入します。よほどのことがない限り、契約をキャンセルすることはありません。ほとんどの場合、不動産会社も銀行からの融資を受けて購入しますが、個人とは異なり、融資を受けられないという理由で契約がキャンセルになることはありません。
仲介手数料がかからない
仲介の場合、不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。買取の場合は当然のことながら仲介ではないので、手数料は発生しません。ただし、仲介業者を介して不動産買取業者に買い取ってもらう場合には、仲介手数料が発生します。
契約不適合責任免責での売却が可能
不動産を売却する売主には「契約不適合責任」が課せられます。これは、種類・品質または数量に関して契約内容に適合しない場合、売主は債務不履行の責任を負うというものです。
例えば、契約後に発見された雨漏りやシロアリ被害などがこれに該当します。これらが見つかった場合、買主は損賠賠償請求などの権利を主張することができます。売主は、売却した後でも補修などの対応をしなければなりません。
しかし、買取で不動産会社が購入する場合、売主の契約不適合責任は免責されます。不動産会社が契約不適合責任を負い、売主の責任は免除されるためです。その分、気分的にはラクに売却できるでしょう。
ご近所さんに知られることなく売却できる
仲介の場合、レインズ※への登録はもちろんのこと、ポータルサイトへの掲載やチラシ配布などの販売促進活動を行うのが一般的です。
一方、買取の場合は広告掲載などの販売促進活動を一切行わず、内密に売却することが可能です。
※不動産会社のみが登録・利用できる、物件情報を確認できるネットワークシステム
買取のデメリット
買取のメリットをたくさん挙げましたが、もちろんメリットばかりではありません。買取のデメリットを考えてみましょう。
売却価格が市場価格より安くなる
買取による売却価格は、仲介で売却するより安くなるのが一般的です。先にも述べたとおり、不動産会社は事業として物件を買い取ります。買い取った物件は解体やリフォームを行い、商品化して再販売します。商品化するための費用を差し引き、再販売の利益を見越した上で買取価格を算出するため、仲介として売りに出されている物件と比較すると、買取価格はどうしても安くなります。一般的には、3割前後安くなることが多いでしょう。売却価格が安くなることは、買取の最大のデメリットです。
仲介と買取の比較一覧
ここまで挙げたそれぞれの特徴を表にまとめました。
仲介 | 買取 | |
---|---|---|
仲介手数料 | 必要 | 不要 |
売却期間 | 1か月以上 | 最短3日 |
掃除・片付け | 必要 | 不要 |
売却の確実性 | △ | ◎ |
契約不適合責任 | 有 | 免責 |
売却価格 | 市場価格 | 市場価格の7割前後 |
売却活動 | 公開 | 非公開 |
買取に向いている条件
物件によっても、仲介向き、買取向きがあります。ここでは買取に向いている物件の条件を挙げました。売却を考えている物件がこれらに当てはまるかどうか、チェックしてみましょう。
- 早急に現金化したい方
- 面倒くさいことはやりたくない方
- 築年数が古い建物の物件
- 周辺の分譲住宅と比較して著しく大きい土地の物件
- 周辺の分譲住宅と比較して著しく小さい土地の物件
- 住宅地以外の商業地の物件
- 再建築不可の物件
- 事故物件
買取での売却でかかる費用
買取の場合、仲介手数料こそかかりませんが、不動産の売却に関する費用自体は仲介と同じです。契約書に貼る印紙代、抵当権抹消や住所移転などに伴う登記費用、売却益に応じた譲渡所得税などがかかります。不動産売却に掛かる費用は別ページで詳しく解説しています。
買取に関するQ&A
買取について、よくある質問をQ&A形式でまとめました。
不動産会社は必ず買い取ってくれるの?
不動産会社も、全ての不動産を必ず買い取れるという訳ではありません。物件それぞれに特色があるので、売却を検討されているのであれば、まずは不動産会社に相談してみましょう。
買取価格は不動産会社と交渉できるの?
交渉は可能です。不動産会社によって、強みや得意とする物件のタイプも異なります。買取を検討する場合は、一社のみで決めるのではなく、複数の不動産会社から査定してもらうようにしましょう。
家具や家電を残したままでも買い取ってくれるの?
家具や家電など、不用品がある状態でも買取はしてくれます。ただし、これらを残しておくと物件の価値は下がるため、不用品はできる限り自分で処分しておいたほうが良いでしょう。
住宅ローンが残っていても買い取ってくれるの?
住宅ローンが残っていても買取は可能ですが、買取金額がローン残高を上回らないとローンを完済できず、抵当権(住宅ローンを組む際に、金融機関が不動産を担保にする権利)を抹消することができません。その場合、不足分を現金で用意する必要があります。
まとめ
ひとくちに「不動産買取」と言っても、全てが同じではありません。戸建かマンションか、工業地か商業地か、商業ビルか居住用かなどさまざまです。狭い土地の場合もあれば広い場合もあります。
不動産の売却を検討される場合は、不動産会社の強みを調べた上で相談し、「最も良い条件」を提示してくれる会社を選択するようにしましょう。「最も良い条件」とは、買取金額だけではなく、売主の希望を理解し、協力してくれることです。
仲介による売却であれば、買主は個人です。しかし、買取の場合は、プロフェッショナルである不動産会社が買主となります。不利な条件を提示されていることを理解しないまま売買契約を結ぶことのないよう、不動産会社選びは慎重に行ってください。
監修:齋藤祥文
資格:不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士