アパートの退去費用をわかりやすく解説!事前準備でトラブル回避
引っ越しが決まっていざ退去という時に気をつけたいのが、現在住んでいるアパートの退去費用です。高額な退去費用を請求されないよう、借主は何を負担すべきかを知っておく必要があります。今回は、アパートの退去費用について、概要やトラブルの対処方法について解説します。
アパートの退去費用とは
アパートの退去費用として請求されるのは、主に「原状回復費用」と「クリーニング費用」です。原状回復費用は、経年劣化を除き、故意や過失、善管注意義務違反などにより借主が設備を壊したり、床や壁紙を汚したりした場合に支払う必要があります。室内明け渡し時の退去立会いでは、室内の原状回復費用がいくらかかるかがポイントになります。
国土交通省では、過去に貸主から高額な原状回復費用の請求を受けるトラブルが多発したことから、1998年に原状回復についてのガイドラインを定めています。このガイドラインの内容が、現在の退去立会いの標準的な基準です。ガイドラインでは、原状回復については「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。
借主が負担すべきもの
- カーペットへの飲みこぼし、たばこによる焦げなど
- トイレ・浴室のカビ
- 壁紙や床への落書き
- たばこのヤニ汚れや臭い
- ペットを無断で購入していた場合の引っ掻き傷や臭い
- セキュリティー目的での鍵交換
貸主が負担すべきもの
- 経年劣化による壁、床の汚れ、焼けなど
- 家具によるフローリングのへこみや焼けなど
- 画鋲やピンの穴
- エアコンのクリーニング
一方、クリーニング費用については契約書の特約として明記されていることが多いです。クリーニング費用の支払い方法としては、契約時に支払う、退去時に請求されるといった2つのパターンがあります。契約書に明記されていない場合は、国土交通省のガイドラインでも、クリーニングについては貸主が負担するのが妥当とされています。
アパート退去費用の相場
次は、間取りや居住年数別のアパートの退去費用について解説します。
間取り別の平均退去費用
クラウドソーシングサービスのランサーズが、賃貸物件の退去費用に関するアンケートを200名に実施したところ、退去費用の平均額は63,283円でした。広い部屋の方が退去費用は高くなる傾向にあります。
間取りごとの退去費用の平均額は次の通りです。
- 1R、1K、1DK、1LDK:49,980円
- 2K、2DK、2LDK:79,924円
- 3DK、3LDK、4K、4DK、4LDK:90,139円
居住年数別の平均退去費用
居住年数が長いと設備や壁紙・床も傷みやすく、退去費用も高くなる傾向にあります。
居住年数別の退去費用の平均額は次の通りです。
- ~3年:49,431円
- 4年~6年:61,694円
- 7年以上:87,090円
クリーニング費用の平均
クリーニング費用は、部屋の広さによって価格が変わります。
間取り別のクリーニング費用の平均額は次の通りです。
- 1R、1K(20㎡程度):15,000~30,000円
- 1DK、1LDK(30~40㎡程度):20,000~40,000円
- 2DK、2LDK(40~60㎡程度):30,000~50,000円
- 3DK、3LDK(60~80㎡程度):50,000~80,000円
- 4DK、4LDK(80㎡以上):70,000円~
退去費用の支払うタイミングと支払方法
アパートの退去費用の支払うタイミングと方法については、原状回復費用とクリーニング費用で異なります。
原状回復費用
退去立会い時に借主が原状回復費を負担する箇所について確認を行います。1~2週間くらいでリフォームの見積もりが出るので、その内容に問題が無ければ管理会社や貸主に直接現金で振込みをします。管理会社が間に入っている場合は1ヵ月程度かかるケースもあるので、遅い場合は管理会社に確認するなど注意が必要です。
敷金がある場合は、リフォーム費用が敷金より高い場合は差額を振込み、敷金より低い場合はリフォーム費用が差し引かれた金額が返金されます。
クリーニング費用
契約書の特約で定められているケースが多く、契約時の敷金・礼金や初月分の家賃と一緒に現金で支払うか、退去時の原状回復費用と一緒に支払うかのいずれかです。
アパートの退去費用をめぐるトラブル
次に、アパートの退去費用についてのトラブルと対処方法について解説します。アパートの退却のトラブルには、敷金の返金に関する問題、高額な原状回復費用の請求、入居前からあった傷や汚れについての請求といったものがあります。
敷金の返金に関する問題
最近では敷金ゼロの物件が増えましたが、現在でもファミリータイプだと20万円以上の敷金を条件としている物件もあります。本来、敷金は担保的な要素が強く、何も問題が無ければそのまま返金されますが、実際には原状回復費用を高く見積もりされて大幅に減額される、返金されないといったトラブルが多いです。
対処法
令和2年の民法改正で敷金と原状回復については明確化されており、最近の賃貸借契約書では原状回復費用等について目安の金額が書いているケースも多いです。ただ、物件によっては原状回復の費用についてあいまいなものもあるので、賃貸物件を契約する際に敷金がある場合には、返金の条件について確認しておく必要があります。気に入った物件でも条件があいまいな場合は、退去時のトラブルを考えて別の物件に変更することも検討しましょう。
高額な原状回復費用の請求
退去時に相場以上の高額な原状回復費用を請求されるトラブルも多いです。現在では、貸主と借主の原状回復の負担については明確に区分されています。しかし、本来貸主が負担すべき個所であるにもかかわらず、原状回復の見積もりに記載してくる貸主も実際にはいます。知識がない場合は、借主がそのまま知らずに払ってしまうケースも多いです。
対処法
アパート退去時の原状回復については、貸主と借主がそれぞれ何を負担すべきかを国土交通省のガイドラインを確認することが重要です。貸主が、本来は借主が負担すべきでない点について費用を請求してきた場合、このガイドラインを使って指摘することで、高額な請求の支払いを回避することができます。管理会社が退去立会いする場合は、基本的にはこのガイドラインに従って対応してくれますが、直接貸主と契約している場合は注意が必要です。
入居前からあった傷や汚れについての請求
どさくさに紛れて入居前からあった壁や床、柱などの傷や汚れについて、貸主が原状回復費用を請求してくるトラブルも多いです。
対処法
もし、入居前に壁や床、柱などの傷や汚れが気になる場合は、写真を撮っておくことで請求があっても対抗することが可能です。撮った写真を仲介会社にメールなどで送り、貸主に伝えてもらえば退去時にトラブルになることもありません。最悪の場合は仲介会社に責任を取ってもらうこともできます。
アパートの退去費用で注意すべき特約
アパートの契約時に注意すべき、退去時の特約について解説します。契約書に無い事項については、特約として付け加えることができます。特約を加えることで契約時にアパートの退去時のトラブルを防ぐことができますが、借主にとっては不利になるケースもあるので注意が必要です。
アパートの退去時の特約には、原状回復特約、敷引き特約などがあります。
原状回復特約
原状回復については、契約書には記載されていないことが多いので、特約で範囲や費用について定めるケースがあります。個人同士の契約の場合、基本的には合意してしまうと認めたことになってしまうので、特約の内容については注意しましょう。例えば、「経年変化の有無に関わらず壁紙・床については退去時に借主が原状回復する」、「畳1枚5万円」といった内容の特約が入っている場合は、借主に不利になる特約と言えるので、削除してもらうべきです。
敷引き特約
敷引き特約は最近では少なくなりましたが、関西圏で比較的多い特約です。敷引きは、契約時に一定の敷金を預かり、そこから決まった額を引いて返すという取り決めを契約時に決めておく方法です。
例えば、敷金30万円の物件の場合、敷引き特約で退去時には25万円を引き、5万円だけ返金するといった取り決めを行います。原状回復に実際に25万円がかかる場合だと問題ありませんが、きれいに利用したのでそこまでかかりそうもない場合には、借主は損をすることになります。そのため、退去時にもう少し敷金を返金してほしいといったトラブルになるケースも多いです。
敷引き特約のある物件の場合は、敷引きされる金額が妥当かどうかも含めて物件を選ぶ必要があります。
退去費用を抑える方法
最後に、アパートの退去費用を抑える方法について解説します。アパートの退去費用を抑える方法としては、きれいに掃除をする、管理会社と交渉する、自分で修繕するといった方法があります。
きれいに掃除する
原状回復の費用の中には、トイレや浴室のカビ、壁や床の落書きなど、自分で掃除できる部分も多いです。室内についても極端に汚れている場合は、クリーニングも特別費用を取られるケースがあります。アパートの退去費用を抑えるためには、目につくところをできるだけ自分できれいに掃除をすることが重要です。きれいに掃除をしておけば、退去立会いをする管理会社の印象も良くなるので、原状回復費用が安くなるケースもあります。
管理会社と交渉する
管理会社から請求されたアパートの退去費用は下がらないと思っている人もいるでしょう。しかし、アパートの退去費用について管理会社と交渉して、費用の引き下げに成功した事例もあります。国土交通省のガイドラインを参考にしているといっても、退去に立ち会う担当者によって解釈が異なることもあるので、おかしいと思ったら交渉してみましょう。
自分で修繕する
最近ではDIYが流行していることもあり、手先が器用な人であれば、壁紙や床の張り替えもできると思います。
修繕できる部分については、自分で修繕するというのも一つの方法です。ただし、修繕に失敗すると余計に費用がかかってしまうこともあります。無理のない範囲で行いましょう。
必要以上の請求を防ぐため、ガイドラインを把握しよう
アパートの退去費用については、原状回復費用とクリーニング費用があります。
現在は、ほとんどの管理会社で国土交通省のガイドラインを元に退去立会いを行っているためトラブルは減っていますが、個人の貸主の場合は独自の基準で退去立会いを行っているケースもあるため注意が必要です。
アパートの退去でトラブルにならないためにも、ガイドラインや原状回復の費用の相場を把握しておくことが重要です。