一戸建ての査定では何をチェックされる?気をつけるべきポイント
一戸建てなどのマイホームを売却するとき、できるだけ高く売却したいですよね。不動産の価値を測る査定で、不動産会社はどのような点を見ているのでしょうか。
不動産会社がチェックするポイントを知っておけば、どの点が査定にプラスに(またはマイナスに)なっているのかを理解し、対策がしやすくなります。一戸建ての査定項目や気をつけるべきポイントを解説します。
査定価格とは?
査定価格は、不動産会社が3ヵ月程度で売却できることを想定して算出した価格のことです。不動産会社と媒介契約を結ぶとき、期間を3ヵ月と定めることが多いのも、査定金額はすぐに売却できる価格ではなく、時間がかかっても3ヵ月程度で売却できる価格を設定しているためです。
不動産会社によっては、売却できないと査定金額の8~9割程度で買い取ってくれる「買取保証」を行うところもありますが、査定価格はあくまでも想定で、その金額で売却できることを保証しているものではありません。
査定の方法
査定には、机上査定と訪問査定があります。机上査定は、依頼者からもらった一戸建ての物件の情報を元に周辺の事例も参考にして、査定価格を算出する方法です。最近ではAI査定システムも活用されています。訪問査定は、実際に物件を訪問して詳しく査定する方法です。
マンションであれば机上査定だけですぐに売却活動を始めるケースもありますが、建物によって条件の変わる一戸建ての場合は、実際に物件を見ないと分からない点も多いので、訪問査定が必要になります。例えば、道路の幅や隣地との境界・越境、騒音・振動、臭気などは現地に行かないと確認できません。さらに、地下埋設物の状況や隣地との関係性などは売主にヒアリングする必要があります。一戸建ての売却時には、訪問査定を行った上で、より正確な査定価格を算出してもらいましょう。
訪問査定を行うといくらで売却できるか目安が分かるので、住宅ローンの返済が可能か、次の物件を購入するのに頭金がどのくらい用意できそうかといったことが分かります。
住宅ローンの残債以上の価格で売却できれば問題はありませんが、残債以下だと差額を準備できないと売却できない場合があります。
建物の査定価格はどうやって決まるの?
次は建物の査定額を上げる要因・下げる要因について解説します。建物の査定価格は、あくまでも基礎価格となるので、その他の要因で査定額が変動します。
建物の査定額を上げる要因
査定額が上がる要因としては、室内の状態が良い・リフォームをしている・建物の建具や床材などのグレードが高い・高い設備を入れているなどが考えられます。中古一戸建ての買主にとって重要なのは、リフォーム代がどの程度かかるのかということです。そのため、リフォーム代がかからない物件・期待以上のリフォームをしている物件などは建物の査定額が上がります。
外壁リフォーム・屋上防水・人気のカウンターキッチンやアイランドキッチン・ウォークインクローゼットなどの設備が備わっている場合はプラス要因となります。また、最近では、省エネや耐震リフォームを行っているケースが多く、この場合も査定額は上がるので不動産会社にアピールしましょう。
建物の査定額を下げる要因
建物の状態が悪いと査定額が下がる要因になります。具体的には、室内が汚い・施工状態が悪くて雨漏りしている・築年数が古いのに耐震工事をしていない・旧耐震物件である・アスベストが使われているといったケースです。最近は大きな地震も多いので、旧耐震基準で建てられた建物(1986年5月31日以前に建てられた建物)かどうかを気にする購入者もいます。
また、1975年以前に建てられた建物においては、有害物質であるアスベストが使われているケースもあります。アスベストが使われている場合には、解体やリフォームをする際にアスベストの飛散防止対策が必要です。対策には多額の費用が掛かるので、これも建物の査定額を下げる要因になります。
その他、査定額に影響を与える要素
一戸建ての査定額を決める要素には、他にも次のような項目があります。
売却を検討している物件がある地域の主要価格帯
個々の査定額だけでなく、売却を検討している物件がある地域の主要価格帯も参考にする必要があります。
一戸建ての査定金額は、土地と建物およびその他の要因を元に算出されますが、その地域の一戸建てがどの程度で売却されているかも調査することが重要です。同じ築年数、規模で売り出されている物件に対して、査定額があまりにも高いと売却は難しいでしょう。特に、土地が広い物件や建物が大きい物件では、査定金額が高くなる傾向があるので、周辺の主要価格帯と比較して価格の調整が必要です。
直近の売却実績などの市況
ここ数年は都市部でも一戸建ての価格が上がっているので、直近の売却実績など市況(市場での取引状況)のチェックも重要です。特に、売却事例が少ないエリアだと価格の上昇に気づきにくいケースもあります。
そういった場合は少し範囲を広げて情報を収集するなど工夫が必要です。現在の価格上昇時の査定については、全体的に査定金額が高くなる傾向にあり、不動産会社の査定の仕方や考え方によって査定金額の幅も大きくなります。あまり高すぎる査定も売却に時間がかかることになってしまうだけなので、不動産会社を選ぶ際には注意が必要です。
ブランド立地かどうか
エリアによっては、街並みや学校区などから人気の「ブランド立地」と言われるエリアがあります。ブランド立地であれば、購入者も多いので査定額も当然上がります。物件の距離は近くても道路を挟んだり、町名が変わったりするだけで価格に大きく差が出ます。
不動産会社はそういったブランド立地を把握していることがほとんどですが、少し離れると学校区などについては知らないことも多いです。不動産会社が知らない場合は、そのエリアの情報を伝えることで査定額も大きく変わります。
一戸建ての査定でチェックされるポイント
不動産会社が査定時にチェックしているポイントは次の通りです。
所有者は誰か
不動産会社は、訪問査定の際に登記簿謄本などの資料を準備します。売却にあたり土地の真の所有者と媒介契約を結ぶ必要があるので、訪問査定では必ず登記簿謄本の所有者と売主が同一人物であるかを確認します。相続登記が終わっていないなど所有者と登記簿謄本の所有者が違う場合は、売買契約までに登記を真の所有者へ変更しておかなければなりません。
土地の境界
一戸建ての場合、基本的には建物と一緒に土地も売却します。したがって、売主は買主に対して土地の境界を明示する必要があります。
境界を明示するのに一番確実なのは「確定測量図(測量を実施し境界の全てが確定したことの証)」を提示する方法です。確定測量図があればそれを提示するだけで土地の境界を証明できるので、訪問査定のときに不動産会社にコピーを渡しておくといいでしょう。
確定測量図が無いケースでも、一部だけ測量をしていて「筆界確認書(隣地の人と境界を確認した証)」などを作成しているケースもあります。筆界確認書も売却時に重要になるので不動産会社にコピーを渡しておきましょう。筆界確認書がなく境界が不明な部分については、訪問査定時に不動産会社に伝えられるように準備しておくと査定もスムーズです。
越境の状況
上記の境界を確認することで、越境しているかどうかも分かります。越境とは、建物や敷地内の植物などが境界線を越えていることです。植栽やブロック塀、擁壁(ようへき)・フェンスなど空間の上下だけでなく、基礎杭や給水管など地中においても確認する必要があります。
越境している場合は、越境物の所有者は誰か、確認が必要です。確認してブロック塀が越境していた場合、すぐに撤去する必要はありませんが、建て替えの際には越境を解消しなければなりません。
特に越境がひどい場合には越境の覚書を締結しているケースもあるので、その場合は不動産会社に覚書のコピーを渡しておくといいでしょう。
日当たり・眺望・風通し
特に、日当たり、眺望は査定価格に大きく影響します。日当たりについては、道路との接地面(開口部)がどの方角を向いているかをチェックされます。南向きだと日当たりが良いので評価が高く、その他の方角については東、西、北の順番に良いとされています。角地だと南東が一番良いということになります。
高台の一戸建てなど、眺望が良ければ査定に大きくプラスになりますが、眺望が悪いと大きなマイナスになってしまいます。風通しについては、建物の開口部が北と南にあるなど、風がどう通るかをチェックします。
周囲の環境
訪問査定では、近隣にスーパーやコンビニ、公共施設があるか、近所に住む人の雰囲気、密集地かどうかなど周囲の環境も調査されます。周囲の環境も査定額を左右する重要なポイントです。ターミナル駅が近い、歩いて商業施設に行けるなど交通の利便性が高い、近くに大きなスーパーやコンビニがあるなど生活しやすい環境が整っている場合には、査定金額が高くなります。
騒音・振動・臭気など
騒音や振動、臭気なども査定のポイントです。踏切が近い、大きな道路に面している、ごみ焼却施設があるなどの場合は、大きなマイナスポイントになります。しかし、例えば騒音が気になるエリアの物件であれば、防音サッシや二重窓にするなど防音性を高める対策をしているケースも多いと思います。その場合、不動産会社にきちんとアピールすることが重要です。
物件の管理状態
一戸建ての場合は、マンションと違って建物の管理は自分でしなければなりません。所有者によって管理状態が大きく異なりますが、管理状態が良い物件は査定の評価も高いです。
外壁工事やシロアリ対策を行っている場合は、不動産会社に資料を提出してきちんとアピールしましょう。
給排水などの設備
不動産会社の中には、キッチンや浴室、洗面所などの蛇口やシャワーの水圧などをチェックするところもあります。水圧が弱い場合は査定評価が下がってしまうので、水圧調整などを行っておく方がいいでしょう。
雨漏り、建物の傾きなどの瑕疵
雨漏りや建物の傾きなどは、長年住んでいると気づきにくいものです。木造の一戸建ての場合は、築年数が古くなると、どうしても床や柱にゆがみが生じたり、雨漏りが起こります。ゆがみや雨漏りなどの欠陥は瑕疵(かし)といい、個人間売買の場合は、引き渡し後約3ヵ月の間に瑕疵が発見された場合は、売主に修繕義務が生じます。
現状把握している欠陥については、訪問査定時に不動産会社に相談することが重要です。修繕した方がいいか、価格を下げる前提でそのまま売却した方がいいかなどアドバイスがもらえます。
一戸建ての査定は綿密に
家を売却する際、査定金額を確認してはじめてローンを完済できるか・新居の頭金を作れるかなど判断することができます。
一戸建ての査定金額は、土地と建物以外にもさまざまな要因で決まります。査定では、不動産会社が3ヵ月程度で売却できる価格が目安となります。また、一戸建ては同じ条件の物件がほとんどなく不動産会社がチェックする項目も多いので、売却前は必ず訪問査定してもらうようにしてください。
特に一戸建ての場合は不動産会社によって基準が異なり、査定額に差が出やすいので、必ず複数の不動会社に依頼するようにしましょう。