不動産売買の仲介手数料の仕組みと仲介を通さずに売却する方法
土地や建物などの不動産を売買する際に、不動産会社に依頼すると仲介手数料がかかります。仲介手数料の仕組みや支払う適切なタイミング、仲介手数料をかけずに売買する方法、仲介手数料の安さで業者を選ぶリスクなどについて解説します。
不動産売買の手数料とは
不動産を売買するためには、一般的には売主が不動産会社に仲介を依頼し、不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約は「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。媒介契約後は、仲介業者が新聞広告やチラシ、住宅情報サイトに掲載するなどの販売活動を行います。売買契約が成立すると、成功報酬として不動産会社に仲介手数料を支払います。
仲介手数料の内訳
仲介手数料に含まれる内訳は次の通りです。
- 物件案内
- 重要事項説明書の作成
- 売買契約書の作成
- 登記権利情報等の調査
- 販売活動の費用(チラシのポスティングなど)
- 引き渡しまでの必要書類
- 物件の耐震・耐久診断
不動産会社によっては、価格競争のため仲介手数料の安さをアピールしているところもあります。
仲介手数料の上限
仲介手数料は、宅地建物取引業法により上限が定められており、価格によって異なります。
- 400万円超:取引物件価格×3%+6万円+消費税
- 200万円~400万円以下:取引物件価格×4%+2万円+消費税
- 200万円以下:取引物件価格×5%+消費税
仲介手数料は上限があるものの、不動産会社が自由に設定することができるため、不動産会社によって異なります。
具体例
仲介手数料の具体的な例を計算式で表すと次の通りです。
例えば、取引価格が2,000万円であれば、(売却価格2,000万円×3%+6万円)×消費税=726,000円が上限となります。
売主と買主の両方を仲介しているような場合は、半額にしたり一方を無料にするケースもあります。このように、売主と買主の両方の間に入ることを「両手仲介」と言います。売主と買主それぞれに別の不動産会社が仲介する場合は、「片手仲介」と言います。
上限を超えて仲介手数料を取った場合、宅建業法違反となります。また、前金や着手金を請求されることもありません。
仲介手数料は、あくまでも通常の仲介業務に対して支払う費用です。しかし、交渉により、不動産会社が値引きに応じてくれる可能性もあります。
手数料を支払うタイミングおよび発生しないケース
仲介手数料を支払う適切なタイミングは、売買契約が成立したときです。一般的には、物件を引き渡す際に一括で支払う場合と、売買契約成立時に半分支払い、残りの半分は物件を引き渡す際の2回に分けて支払う分割のケースがあります。
「売買契約成立時」とは、売主と買主が契約内容に合意し、契約書を交わすタイミングです。不動産会社によって支払うタイミングが異なるケースもあるため、事前に確認しておきましょう。
一方、売買契約が成立しなかった場合や、売主から不動産を直接購入する、不動産会社が所有する不動産を購入するケースなどでは、仲介手数料は発生しません。
手数料をかけずに売買する方法
手数料かけずに土地や建物を売買する方法もあります。
買取を利用する
不動産買取では、不動産会社に直接買い取ってもらえるので仲介手数料が不要です。不動産会社は、買い取った不動産にリフォームやリノベーションを施し、再販売を行います。しかし、リフォーム・リノベーションの費用などがかかるため、仲介よりも売却価格が低くなります。不動産買取の相場は、仲介の6~7割程度です。
早く売って現金化したい人には、不動産買取での売却が向いています。
仲介を通さずに売買する
不動産売買は、必ず不動産仲介会社を通じて行う必要があるわけではありません。仲介は義務ではなく、個人間の不動産売買も可能です。しかし、不動産の仲介は「宅地建物取引業者」しか行うことができません。
仲介手数料をかけずに売買するには個人間取引を行うことになりますが、次のような流れで行います。
売買する不動産の調査
物件の周辺環境や物件の状態などを調査します。周辺環境では、最寄駅からの距離や、周辺にスーパー、コンビニ、医療機関、役所などが近くにあるかどうかがポイントになります。また、隣地境界線や接道状況なども忘れないようにしなければなりません。土地の境界があいまいであれば、隣人とトラブルになる場合もあります。確定測量図を用いて明示するとトラブル回避につながります。
接道状況については、「建物が建築基準法に定められた道路に2メートル以上接していなければならない」という接道義務があります。接道が4メートル未満の場合は、セットバック(建物を、隣接している道路などとの境界線から離れたところまで後退させること)の必要があります。
当然ですが、建物の外観、外壁、フローリング、内装、設備なども確認します。
売却時に必要な書類を揃える
土地測量図面・境界確認書
境界線のトラブルを回避するため、隣地境界線を示した証明書も必要です。境界がはっきりしてない場合は、物件に隣接した土地所有者の承諾を得て測量図を作成します。主に一戸建てや土地の売買に必要です。
設計図書・工事記録書
建物の維持・管理やリフォーム・リノベーションする際に必要な書類です。一戸建てや土地の売買に必要です。
登記済権利証
法務局から不動産の登記を済ませた人に交付される書類です。2004年まで発行されていましたが廃止され、現在は「登記識別情報」として発行されています。
登記簿謄本・登記事項証明書
不動産の登記事項が記載された書類です。登記事項証明書は、登記事務をコンピューター処理している登記所で発行されたものです。どちらも証明内容に違いはありません。
売買契約書
購入時に交わした売買契約書です。契約日、売買代金、引き渡し日などが記載されています。
物件引渡し時に必要な書類
本人確認書類、住民票、実印・印鑑証明書(発行から3カ月以内)、固定資産税納税通知書などがあります。
安さで仲介業者を選ぶリスク
仲介手数料の安さだけで仲介業者を選んでしまうと、次のようなリスクがあります。
対応が雑になる
仲介手数料が安い不動産業者を選ぶと、価格相応の対応となり、なかなか買い手がつかない場合もあります。
別の名目で請求される可能性がある
追加で広告費が発生したり、遠方の買主と交渉する際の交通費などが発生するケースもあります。
悪徳業者にひっかかる
中には、法外な手数料を請求してきたり、仲介手数料以外にもよくわからない名目で高額の費用を請求する悪徳業者が少なからずいます。
手数料についてよく知っておく
不動産の売買活動において、仲介手数料はつきものです。不動産そのものの状態や価格には気をつけていても、手数料についてはどうしても二の次になってしまします。
手数料がどのようなものかについてしっかり把握し、不動産会社を選ぶ際には、手数料についても問題がないかよく確認しましょう。