紛失しても大丈夫!?土地権利書がない場合の手続き方法
土地権利書とは、自分が土地の所有者であることを示す書類です。紛失してしまうと再発行ができませんが、土地権利書がなくても土地の売買などができる救済措置が設けられているためご安心ください。土地権利書は、盗難にあっても悪用されるリスクは低いですが、念のため指定の手続きを行う必要があります。詳しく解説します。
土地権利書とは
土地権利書とは、自分が土地の所有者であることを示すための書類です。正式名称を「登記済権利証」といいます。平成17年度の法改正によって、電子データである「登記識別情報」への変更が可能となりました。
土地権利書を使用するのは、主に不動産の譲渡時や、抵当権設定時に土地の所有者を確認するときです。また、土地の相続時に登記上の住所と最後の変更先住所が一致しない場合にも使用します。
土地権利書と似たものに「登記簿」がありますが、この2つは何が違うのでしょうか。土地権利書は「移転登記が完了したことを証明する書類」であるものに対し、登記簿は「不動産の登記情報が記載された情報」です。登記簿は管轄の法務局で手数料を支払えば誰でも閲覧できますが、権利書は、登記されたときのみに発行される証明書です。
土地権利書は再発行ができないので、紛失しないよう大切に保管する必要があります。
土地権利書なしで手続きを行う方法3つ
万が一、土地権利書を紛失してしまった場合、再発行はできませんが、救済措置が用意されています。それが、次の3つです。
事前通知制度
事前通知制度とは、本来土地権利書の提供が必要となる登記において、土地権利書の提供がされずに登記がなされた場合に、その登記が間違いなく土地の所有者本人の意思によってなされたのか、登記官側で確認した上で登記手続きを実行するための制度です。本来土地の登記の際には土地権利書によって土地の所有者を明確にしなければならないのですが、土地権利書の紛失によりそれができない場合の救済処置といえます。
この制度による土地所有者の確認方法は、法務局から送付された事前通知書類を、2週間以内(住所が外国にある場合は4週間以内)に法務局に返送するだけです。あなたが間違いなく土地の所有者であることを証明できます。
資格者代理人による本人確認情報の提供の制度
この制度は、紛失などにより土地権利書を登記所に提出できない場合に、司法書士などの資格者代理人が、適切な本人確認情報を提供できる決まりです。登記官が、資格者代理人から提供された情報が適正であると認めた場合は、事前通知制度を利用せずに登記の手続きができます。
この制度のメリットは、事前通知制度とは異なり、手間や時間がかからないこと。急ぎの場合や多忙な方に最適です。ただし、制度を利用する際は、司法書士などの資格代理人に3~5万円の報酬を支払う必要があります。
公証人の証明制度
公証人の証明制度とは、公証役場で、公証人立ち合いのもとで手続きをすることです。手続きを行うと、あなたが土地の所有者であることが公的に認められます。
公証人の証明制度の費用は3千~1万円程度であるため、資格者代理人による本人確認情報の提供の制度と比較すると費用が大幅に安くなります。ただし、利用の際に印鑑証明書や実印、運転免許証および認証文を付ける委任状が必要になります。そのため、資格者代理人による本人確認情報の提供の制度と比較すると、手間がかかります。
土地権利書の悪用を防ぐには
権利書が盗難に遭ってしまっても、悪用される危険性はあまり高くありません。なぜなら、権利書を使って登記変更をしようとしても、実印や印鑑証明書等の書類による本人確認が必要になるからです。
とはいえ、それでも不安になる方はいらっしゃいます。そこで、権利書が悪用されないようにするための対処法・予防措置を2つご紹介します。
不正登記防止の申出を行う
不正登記防止の申出とは、法務局に申請することで、所有不動産に不正な登記があった際に申請者に通知をしてくれる制度です。そのため、この申出をしておくことで、万が一第三者によって自分の所有物件に新しく登記申請がされた場合に、法務局から通知が受けられます。
もし権利書が悪用されて勝手に自分の土地に新しい登記がされてしまった場合、その登記を抹消する必要があります。しかし、この申出を行っていれば、登記申請の際に本人確認が行われるようになるので、不正登記を防ぐことができます。ただし、申出をしたからといってすぐに登記申請が無効とされるわけではありません。別途、法律の専門家に相談したほうがいいでしょう。
登記識別情報の失効申出を行う
登記識別情報の失効申出とは、現在の土地権利書を無効にできる制度です。この申出をしておくことで、土地権利書を盗んだ人が新たに登記しようとしても、登記はできなくなります。
失効した土地権利書は永久に使えないため、悪用される心配は必要ありません。ただし、今後土地に関する登記をする際は、前述した別の方法によってあなたが土地の所有者であることを証明する必要があります。登記識別情報の失効申出は、法務局で手続きができるので、権利書紛失時の“最後の手段”として覚えておきましょう。
土地売却の際、土地権利書の提示以外に必要なこと
土地売却の際は、土地権利書の提示以外にもやるべきことがあります。
所有権移転登記
土地の所有者が変わった場合、登記簿上の所有者情報を変更する、所有権移転登記が必要になります。なぜなら、そうしなければ常に正確な情報が把握できず、二重売買などのトラブルに発展する危険性があるためです。土地の売主は、登記の名義がそのままになっているのを良いことに、第三者とも土地の売買契約を結んでしまうことがあるのです。この際、登記名義が売主のままになっていると、もとの買主は土地の所有権を主張できません。買う側は正しく移転登記されたかどうか、しっかり確認する必要があります。
住所変更・氏名変更登記
例えば、結婚などによって氏名が変わることがありますが、実際の土地の所有者の氏名と登記簿上の所有者の氏名との整合性を取るため、すぐに変更登記をしなければなりません。
司法書士に依頼する場合は1~2万円程度かかりますが、ご自身で手続きを行う場合は数千円で済みます。それほど難しい手続きではないため、ご自身で行ってもいいかもしれません。
抵当権抹消登記
抵当権とは、ローンなどで借り入れをする場合などの担保として貸主側が設定する、優先して弁済を受けるための権利です。不動産を売却するには、抵当権抹消登記をする必要があります。
抵当権抹消登記はご自身で行うこともできますが、難易度が高いため、初めての場合は司法書士に依頼するのがおすすめです。司法書士に依頼するとかかる費用は、1~3万円程度です。
土地権利書は万が一紛失してしまっても大丈夫
土地権利書は再発行ができませんが、万が一紛失してしまっても、手続きを行えば土地の売買などは問題なくできます。ただし、手続きには費用がかかることがあるため、なるべく紛失しないように気をつけましょう。